☆しあわせセラピー☆
ひとりさんはいつも機嫌がいいんです。
「自分の機嫌くらい自分でとって生きるんだよ。人にとらせちゃダメだよ」 これが口ぐせです。
機嫌の悪い人がいると、
「わたし、なにかしちゃったかな・・・」
「どうすれば、機嫌を直してくれるんだろう」
と、周りの人が気を使います。
そう思わせてしまったとしたら、それは幸せになる白い石(意思)を放り投げて、自分にも周囲にも黒い石をぶつけまくっている状態です。
昔、ひとりさんと一緒に地方でタクシーに乗ったときのことです。
行き先を告げるひとりさんの言葉のイントネーションを聞いた運転手さんが、ミラー越しにわたしたちを一瞥して、吐き捨てるように言いました。
「お客さん、東京から来たの? 俺さ、日本中で東京がいちばん嫌いなんだよね!あんな空気の悪いゴミゴミしたところ、人が住む場所じゃないよねぇ」
「んっ?」となるわたしを横目に、ひとりさんは変わらないトーンで言いました。
「運転手さんも、東京に住んだことがあるのかい?」
「ハハッ、ないよ。大ッ嫌いなんだから」
「そっか。ここもいいところだけどさ、『住めば都』って言うだろう? 東京もいいところなんだよ」
飄々と言われたのが肩透かしだったのか、運転手さんはそのままムスッと黙り込みました。
タクシーを降りたあとで、わたしが「いやなことを言う人でしたね」と顔をしかめると、ひとりさんは笑いました。
「言っていいこと悪いこと、判断できたら1年生。
あの運転手さんは、まだ幼稚園児なんだよ。そう思うと腹も立たないだろ?」
「ははあ、なるほど」
言ってはいけないことを言って、人の気分を害する人は、人間関係を学ぶスタートラインに立ったばかりだという意味です。
ひとりさんは、小さいときからお母さんによくこの言葉を聞かされていたそうです。
「言葉がちゃんと使えるようになれば、人間関係の1年生。できない人は、幼稚園」
そう考えるとムッとした気持ちは引っ込んで、ひとりさんの涼しい横顔に、わたしはすっかり毒気を抜かれました。
「それにさ、あの人はどう見ても、タクシーの運転手さんには向いてないだろ。それなのに、ああやって向いてない仕事を一生懸命にやっているんだよ。
あの人がいまできることを精一杯やってるんだよな。偉いじゃないか」
20代のわたしが、お師匠さんの「不動のご機嫌」を目の当たりにして、脱帽した出来事です。
その後、ひとりさんはこうも言いました。
「機嫌をよくするのって、この世で最高のボランティアだよな」
たしかに柳に風で相手の悪意を受け流すひとりさんは、わたしの不機嫌もたちまち洗い流してしまいました。
ご機嫌な人のエネルギーって、周りにパッと伝染するんですね。
生きていると、毎日、いろいろなことが起こりますが、あなたも自分で自分の機嫌をとれる素敵な人でいてください。
斎藤一人 高津りえ
『すべての感情は神様からの贈り物』より
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